大判例

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高松高等裁判所 平成6年(ネ)456号 判決

事実及び理由

第三 争点に対する判断

争点に対する判断は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実及び理由の「第三 争点に対する判断」記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決四枚目表一〇行目の「ないし一三条」を「、八五条、八六条」と改め、同枚目裏一行目の「同法」の次に「六条、」を、同六行目の「四ないし七、」の次に「一二の1、2」を加える。

二  同五枚目表九行目の後に、次のとおり加える。

「その後、平成五年五月三一日、知事は、平成五年度の漁業計画を定めてその告示を行ったが、同計画の中には控訴人主張の定置漁業権に対応するものは含まれていなかった。」

三  同五枚目裏七行目から同六枚目裏一〇行目までを、次のとおり改める。

「3 右認定事実によれば、控訴人は、平成五年九月一日以降、夜須町住吉沖の定置漁業権につき免許を受けていないのであるから、同漁業権を有していないことになる。

これに対し、控訴人は、その漁場計画設定申請書及び漁業権免許申請書が不受理になったことの違法を主張して、控訴人と被控訴人間においては、右免許が付与されたと同じ法律関係に立つものとして扱われるべきであると主張する。

しかしながら、現行漁業法においては、漁業権は免許によってはじめて付与され、その付与された漁業権はその存続期間満了によって当然に消滅するものであって、更新制度は認められていない(同法二一条)のであるから、このような制度の下においては、仮に控訴人主張のような事由が存したとしても、新たな免許を受けていない控訴人に、被控訴人との間において、同免許を受けたと同じ法的地位を認めることはできない。

さらに付言するならば、現行漁業法によれば、既存漁業権の存続期間が満了する際に、その時点における当該水面の総合利用や漁業生産力の維持発展の必要性が考慮されて新たな漁業計画が策定され、その計画の内容に適合した免許申請に対してのみ免許が付与されることになっているのである(同法一一条、一一条の二、一三条一項二号)から、既免許業者から従前と同一内容の漁場計画設定申請書が提出されたとしても、知事はこれに拘束されるものではなく、また、既免許業者からの漁業権免許申請に対し、当然に免許が付与されるべきものでもない。したがって、漁場計画設定申請書及び漁業権免許申請書不受理の違法に関する控訴人の主張が仮に認められたとしても、当然に控訴人に対し免許が付与されるものではないから、この点においても、控訴人の主張は失当である。

現行法下においては、右不受理の違法に関する控訴人の主張が仮に認められる場合、控訴人の漁業権免許申請は適法な申請となるので、不作為の違法確認の訴えを提起するか、知事の不受理を却下処分とみなしてその取消訴訟を提起する(ただし、訴願前置の制度がある。同法一三五条の二)ことが予定されているのであって、控訴人が右訴訟に勝訴すると、知事は、控訴人の申請に対して、免許又は不免許等の処分をすることになる。このように、控訴人が主張する知事の違法は、行政訴訟の枠組みのなかで救済されることが予定されているのであって、これらの予定された救済制度を採らずに、他の民事訴訟において、未だなされていない知事の処分(免許又は不免許等の処分)につき一定の処分(免許)がなされたと同じ法的地位を求めることは許されないものである。

第四 結論

よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大石貢二 裁判官 馬渕勉 一志泰滋)

《参考》高知地裁 平成六年一一月二八日判決(平成四年(ワ)第一九一号)

【事実及び理由】

第三 争点についての判断

一 原告の定置漁業権の有無について検討する。

1 漁業権免許の手続としては、知事は、まず、漁民委員、学識経験委員、公益委員で構成される海区漁業調整委員会の意見を聴いて、水面の総合利用を図り漁業生産力を維持発展させるため、漁業計画すなわち漁業の種類、漁場の位置及び区域、漁業時期、その他免許の内容たるべき事項を定めなければならず、海区漁業調整委員会は、右の意見を述べるに際しては、あらかじめ公聴会を開き、利害関係人の意見を聴かなければならない。(漁業法一一条ないし一三条)

そして、定置漁業権の設定を受けようとする者は、県知事に申請してその免許を受けなければならない(同法一〇条)が、漁場計画と異なる漁業の免許の申請に対しては、(知事が同法一一条二項に基づき、海区漁業調整委員会の意見を聴いて漁業計画を変更する場合を除き)知事は免許をしてはならないものとされている(同法一三条一項二号)。

2 本件における原告の漁業計画設定申請等に関して、〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。

(一)知事は、海区漁業調整委員会の意見を聴いて漁場計画設定申請要領を作成しているが、その中で、地元市町村長を経由して提出すること等を定めるとともに、定置漁業については、排他独占性が強く、他の漁業に影響を及ぼしやすいことから、関係する隣接漁業との漁業調整を重視し、遅くとも昭和四七年以降、定置漁業の漁場計画の設定申請には、地元漁業協同組合の同意書を添付することを必要としている。

(二)知事は、平成五年度の漁業免許について、平成四年一二月一五日までに、漁場計画設定申請を提出するよう指示し、これに対して原告は、右期限の数日前に、原告代表者が高知県の水産課に漁場計画設定申請書を持参し、口頭で、原告代表者が地元の手結漁業協同組合と訴訟係争中であることから、地元漁協の同意なく、また、地元町長を経由することなく、申請を受理して欲しいと申し出たが、県側が、これに応じられないとの意向を示したことから、申請書の提出には至らなかった。

(三)原告は、平成五年八月、知事に対し、定置漁業権免許申請書及び漁場計画設定申請書を送付したが、知事は、町長を経由していないこと、漁場計画設定申請書については、漁場計画は漁業調整の必要から地元漁協の同意を求めており、これが添付されていないこと、漁業権免許申請書については、前提となる漁場計画が樹立されていないこと等を理由として、受理できない旨回答した。

(四)なお、原告は、地元漁協との紛争の影響もあり、平成二年秋ころから、全く操業を行っていない。

3 原告は、知事が、原告の漁業計画設定申請を受理しないことは違法であり、また、原告のように既に漁場として利用している免許業者がいる場合には、知事は、これを組み込んだ漁場計画を樹立する義務がある旨主張する。

4 そこで、検討するに、現行漁業法は、漁業権を排他的な物権とみなす(同法二三条)一方で、一度免許された漁業権についても固定的な権利とするのではなく、比較的短い存続期間(定置漁業権については五年)を定め、その都度、水面の総合利用や漁業生産力の維持発展の必要性を考慮して漁場計画を樹立するものと定めており、現に漁場として利用している免許業者には計画樹立等の過程で十分な配慮をするのが相当であるとしても、従前の定置漁業権者であるからといって、その申請どおりの漁場計画が樹立されるべきであるとまではいえない。

また、知事が、定置漁業の漁業計画について、排他独占性が強いことから、隣接漁業との漁業調整を重視し、地元漁協の同意を必要としているのは、前記の漁場計画制度の趣旨から考えても、必ずしも不当なものとはいえないこと、さらに、原告は、漁業計画設定申請時においても二年以上操業をしていない状態であったことなども考慮すると、仮に、本件で原告の漁業計画設定申請行為がなされたと評価される余地があるとしても、原告申請どおりの漁場計画が当然樹立されるべきであったとは到底認められない。

したがって、原告の定置漁業権免許申請は、現に樹立されている漁場計画が変更されない限り、漁場計画と異なるものというほかない。

5 そして、現に、原告の免許申請の前提となる漁場計画は樹立されておらず、別個の漁業計画に基づく別個の定置漁業権が設定されている以上、原告の免許申請の却下等に対して、その無効・取消等を主張し、その中で、いかなる漁場計画が樹立されるべきであったかを論じることの当否はともかく、右のような手続も経ていない本件において、被告との間で定置漁業権を保有するのと同様の法律関係に立つと解釈すべき特段の事情は認められない。

二 よって、原告の差止請求は、その前提となる定置漁業権が認められず、その余の点について判断するまでもなく理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用について民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 溝淵勝 裁判官 楠井敏郎 斎木稔久)

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